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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)94号 判決

原告

第一重機工業株式会社

右代表者代表取締役

鈴木寛

右訴訟代理人弁護士

岸巖

渡邊英城

被告

府中市長 吉野和男

右訴訟代理人弁護士

小沢俊夫

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  納税義務免除認定要件の判断基準について

1  特別土地保有税は、土地の取得及び保有に伴う費用を増大させることにより、土地の投機的取引を抑制し、地価の安定を図るとともに、土地の供給を促進することを目的として、創設されたものであるが、法は、既に社会通念上相当程度の利用がされ、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで、特別土地保有税を課するのは、同税の性格からみて適当でないという考慮から、六〇三条の二において右のような土地について納税義務を免除する制度を設けている(乙一)。そして、右の制度の趣旨からすれば、未利用の土地はもとより、将来の売買等を見越して仮の利用に供されているにすぎない土地については、納税義務免除の対象とすべきでないことになるが、具体的な土地について、それが最終的な需要に供されているものであるか、将来の売買等を見越して仮の利用に供されているにすぎないものであるかの認定は、相当に困難を伴うものであるから、その具体的運用における不公平を避けるため、法は、前記第二の一記載のとおり、外形的、客観的な基準を導入し、社会通念上相当程度の利用がされていることが明確である土地のみを免除の対象とすることとしたものである。

2  したがって、当該土地が法六〇三条の二第一項二号の免除対象の土地に該当するか否かは、同条七項、五八六条四項の規定に従い、基準日現在における当該土地に係る事実(現況)により客観的に判断すべきものであるが、基準日の前後における事実であっても、それが基準日現在の事実(現況)を推認させる補助的な事実であれば、その限度でこれを斟酌することができるし、また、斟酌することを必要とするものである。とりわけ、当該特定施設が施行令五四条の四七第二項二号の「その利用が相当の期間にわたると認められること」という基準に適合するものであるかどうかは、基準日現在の事実(現況)のみではこれを判断することは困難であるから、この場合には、所有者の利用意思、当該特定施設の具体的な利用状況等基準日の前後における事実を総合的に考慮して認定しなければならないというべきである(最高裁昭和六〇年(行ツ)第一七九号昭和六三年四月二一日第一小法廷判決・判例時報一二八〇号六七頁参照)。

二  本件においては、本件駐車場が右の「その利用が相当の期間にわたると認められること」という恒久的な利用に供される特定施設に係る基準に適合するものであったか否かが争われているので、この点について以下検討する。

1  本件土地の利用状況等について

前記第二の二の「前提となる事実」と〔証拠略〕を総合すれば、次の各事実が認められ、原告代表者の供述及び〔証拠略〕の記載のうち右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らし採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  本件土地は、国道二〇号線に面した雑種地(地積九三九平方メートル)で、もとは府中市の市有地であったが、平成六年一二月、佐藤工業が同市との交換によりこれを取得したものである。佐藤工業は、本件土地上にマンションを建築しようとして、平成七年二月二日の試掘を経て、同年三月二日ころから、本件土地において埋蔵文化財の発掘調査を開始したが、原告は、かねてから、その社屋の隣接地である本件土地を取得したいと考えており、同年二月に佐藤工業によるマンション建築計画を知ると、同社に対し、本件土地の売却方を申し入れた。そして、原告と佐藤工業との間で交渉が行われた結果、同年三月二八日、原告が本件土地を三億八〇〇〇万円で買い受ける旨の売買契約が成立した。

なお、原告は、本件土地を取得した当時、本件土地を最終的にどのような用途に利用するかについては具体的な計画を有しておらず、当面は、原告の事業に使用する大型重機等の作業用車両及び従業員の自家用車等の駐車場としてこれを利用しようと考えていたものである。ただし、原告は、当時既に約五〇台程度駐車できる駐車場を有しており、本件土地を駐車場として利用しなければならない切実な必要性があったわけではなかった。

(二)  原告は、佐藤工業から発掘調査の跡を埋め戻してもらった上で、本件土地の引渡しを受け、その後、地盤が自然に固まるのを待ち、その上で、平成七年六月二二日及び同月二三日、当時、原告が工事を請け負っていた建設工事現場から不要となった砕石約二七七立方メートルを原告の下請業者に依頼して本件土地に搬入してこれを撒き、輾圧を行って本件土地を駐車場として整備した。

なお、本件土地に撒いた砕石は、原告が右建設工事の元請である清水建設株式会社から、通常の砕石の業者間価格と比較して格安な一立方メートル当たり五〇〇円という単価で購入したものであり、しかも、原告は、もともと、同社から右砕石を産業廃棄物として処分する工事を請け負っており、右砕石を再利用することによって、その処分に要する費用を浮かせることができたので、現実には、何らの費用もかけずに、本件駐車場を整備することができたものである。

(三)  原告は、本件土地を駐車場として整備すると、ここにコンクリートポンプ車等の原告の作業用車両を駐車させていたが、砕石を撒いてから月日が経過していなかったため、本件駐車場に車を駐車すると、そのタイヤに石がはさまってしまうことから、従業員は自分の車を本件駐車場に駐車することを嫌がり、従業員が本件駐車場を積極的に利用することはなかった。そのため、平成七年七月下旬、同年八月二日、同月三〇日に府中市資産税課職員が本件土地を訪れた際には、本件駐車場には車が一台も駐車されていない状態であった。

(四)  他方、原告代表者は、平成七年七月六日ないし七日ころ、原告の取引先である住友銀行府中支店の三谷課長から電話を受け、ドライバースタンドが本件土地上において店舗を営業したいとの希望を有している旨伝えられ、同月一〇日、三谷課長と一緒に来訪したドライバースタンドの森会長と面会し、同人から、本件土地上で衣料品店を営業したいので是非協力してほしい旨依頼を受けた。その後、原告とドライバースタンドとの間で契約の具体的な内容について交渉が進められた結果、原告は、同年八月二五日、同社との間で、原告が本件土地上に貸店舗を建築し、これを同社に賃貸する旨の賃貸借予約契約を締結した。そして、原告は、同年九月中に本件土地において、右賃貸借予約契約に基づく貸店舗建築に伴う埋蔵文化財の発掘調査を開始し、以後は本件土地を駐車場として利用することはなくなった。

2  右認定事実によれば、原告が本件土地をドライバースタンドに対する貸店舗の敷地として転用することを決定したのは、基準日である平成七年七月一日より後のことであることは確かであるが、原告は、本件土地を取得したものの、その最終的な用途について具体的な計画がなかったため、当面これを駐車場として利用しようとしていたものであること、原告は、基準日から二か月も経たないうちに本件土地を貸店舗の敷地に転用することを決定しており、本件駐車場の利用期間は平成七年六月二三日から起算しても三か月程度にすぎないこと、本件駐車場の整備状況は、砕石が撒かれて輾圧が行われた程度であり、しかも砕石は建設工事現場で不要となった砕石を再利用したもので、本件駐車場を整備するために特別の費用が支出されているわけではないこと、原告は、当時本件駐車場以外に従来から使用していた駐車場を有しており、本件土地を駐車場として利用する切実な必要性はなく、実際上も本件駐車場が積極的に利用された状況にはないことが認められ、また、本件土地は国道二〇号線に面していて商業施設用地とするのに適しており、原告がその取得のため三億八〇〇〇万円という多額な資金を投入していることやドライバースタンドとの貸店舗に関する交渉が速やかにまとまったことなどを考え併せると、原告は本件土地を購入した当初から近い将来これを商業施設用地等として有効利用する構想を有していたことがうかがわれるのであって、これらの事実に照らせば、客観的にみて、基準日現在における本件土地の駐車場としての利用は、本件土地の最終的な用途が決定するまでの暫定的なものにすぎないとみるのが相当であり、したがって、本件駐車場は、施行令五四条の四七第二項二号の「その利用が相当の期間にわたると認められること」という基準に適合しないものというべきである。

三  そうすると、本件土地は、他の要件について検討するまでもなく、法六〇三条の二第一項の規定による納税義務免除の対象とはならないというべきであるから、本件土地の取得に係る特別土地保有税について納税義務免除の認定をしなかった本件否認処分は適法というべきである。

第四 結論

よって、原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)

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